第1話 私は小学校4年生まで、勉強が大嫌いでした。
そう聞かれることがあります。
でも、本当はまったく逆でした。
私は小学校3年生から4年生まで、勉強が大嫌いな子どもでした。
特に算数は苦手でした。
授業中、先生が
「わかる人?」
と聞くたびに、私は目を伏せていました。
当てられないように、小さくなっていたのを今でも覚えています。
宿題も苦痛でした。
泣きながら「あまりのある割り算」のプリントをしていたことは、今でも忘れられません。
通知表は2や3ばかり。
日曜日の夕方になると、翌日の学校が嫌でたまりませんでした。
今思えば、「サザエさん症候群」だったのでしょう。
そんな私が、ある日、自分から勉強を始めました。
勉強が好きになったからではありません。
学校の授業が苦しすぎて、その苦しさから逃れたかったのです。
参考書を買ってもらい、家で予習を始めました。
分からない。
また読む。
図を書いてみる。
調べる。
それでも分からない。
また読む。
何時間も同じページを眺めていた日もありました。
そうしているうちに、不思議なことが起きました。
少しずつ授業が分かるようになってきたのです。
そして、小学5年生の最初の通知表。
算数は「5」になっていました。
もちろん、算数ができるようになったこともうれしかったです。
でも、それ以上に大きかったのは、
「自分にもできる。」
と思えたことでした。
今振り返ると、人生が変わったのは、成績ではなく、この一つの感覚だったと思います。
23年間、学習塾を続けてきて、私はたくさんの子どもたちを見てきました。
そして、一つのことに気付きました。
成績が伸びる子には、共通点があります。
それは、頭の良さではありません。
集中して考え続けられること。
分からなくても、もう少し考えてみる。
もう一度読んでみる。
もう一回やってみる。
そんな時間を積み重ねられる子です。
逆に、すぐに答えを教えてもらうことに慣れてしまうと、
少し形が変わった問題で
「習っていないから分かりません。」
となってしまいます。
実は、私たちも開塾当初は、先生が横について丁寧に教える個別指導をしていました。
「分かりやすい授業」を目指していたのです。
でも、ある日気付きました。
教えすぎることで、子どもたちから考える時間を奪っていたのです。
それから少しずつ指導方法を変えました。
問いかける。
待つ。
読ませる。
考えさせる。
できたときに一緒に喜ぶ。
その積み重ねで、教室の空気も変わっていきました。
不思議なことに、成績も以前より伸びるようになりました。
そして最近、体験授業を受けた子どもたちから、よくこんな感想を聞きます。
「勉強に集中できて楽しかった。」
私は、この言葉が大好きです。
「分かりやすかった。」
ではありません。
「集中できた。」
なのです。
勉強が好きだから集中するのではなく、
集中できたから、勉強が少し好きになる。
私は、その順番なのではないかと思っています。
23年間、子どもたちを見てきて思うのです。
人は、できるようになると変わります。
でも、そのもっと前に、
集中できる自分
を経験すると、人は変わり始めます。
だから私たちは、
成績だけを追いかける塾ではなく、
子どもたちが夢中になって学べる時間を大切にしたいと思っています。
その時間が、
「できた。」
につながり、
「自分にもできる。」
という自信につながるからです。
私は23年間、子どもたちに勉強を教えてきたつもりでした。
でも、本当に多くのことを教えてくれたのは、子どもたちでした。
だから、この話を残しておこうと思います。
次回は、
**「問題を読んでいません。」**
その一言が、私の指導を変えた話を書きます。**