それは、高校3年生になってから急に準備を始める生徒が多いということです。
「学校から推薦がもらえそうです」
「総合型選抜を受けてみたいです」
「何かボランティアをした方がいいですか」
「志望理由書には何を書けばいいですか」
もちろん、そこからできることもあります。
高3からでも、経験を整理したり、志望理由を深めたり、面接に向けて考えをまとめたりすることはできます。
ただ、正直に言えば、高3になってから急に活動を探しても、志望理由書に書ける内容はどうしても薄くなりやすいのです。
大学が知りたいのは、
「ボランティアをしました」
「資格を取りました」
「探究活動をしました」
という事実だけではありません。
その経験を通して、何を感じたのか。
どんな問題意識を持つようになったのか。
なぜ、その大学で学びたいと思うようになったのか。
将来、何を実現したいのか。
そこが問われます。
この部分は、短期間ではなかなか作れません。
だから私は、総合型選抜を考えるなら、高1からヒストリーを作ることが大切だと思っています。
ヒストリーと言っても、立派な実績を並べるという意味ではありません。
高校生活の中で、
何に関心を持ったのか。
どんなことに疑問を感じたのか。
何に挑戦したのか。
誰と出会ったのか。
そこから何を考えたのか。
そういう小さな積み重ねのことです。
最初から、はっきりした将来像を持っている必要はありません。
むしろ、高1の時点で将来像がぼんやりしているのは自然です。
大切なのは、ぼんやりしたまま放っておかないことです。
「自分は何に興味があるのだろう」
「どんなことなら続けられるのだろう」
「どんな社会の問題が気になるのだろう」
「将来、どんな人と関わっていきたいのだろう」
そうした問いを少しずつ持つことが大切です。
印象に残っている生徒がいます。
その子は、中学生の頃から高校3年生まで、障害者施設でのボランティアを続けていました。
成績だけを見ると、決して飛び抜けて優秀というタイプではありませんでした。
しかし、志望理由書の指導をしている時点で、私は「これは伝わる」と感じました。
なぜなら、その子の中に、経験と問題意識と将来像がつながったストーリーがあったからです。
障害者施設で人と関わる。
そこで感じたことがある。
社会福祉について考えるようになる。
自分なりに解決したい課題を持つ。
だから大学で社会福祉を学びたい。
この流れには、無理がありませんでした。
結果として、その子は中堅私大の倍率約5倍の総合型選抜で合格を勝ち取りました。
文章が特別にうまかったからではありません。
その子自身の中に、長く続いてきた経験と考えがあったからです。
もう一人、今でも思い出す生徒がいます。
その子は中学2年生の頃から、
「私は国際ライターになる」
と言っていました。
正直に言うと、当時の私は少し浅はかでした。
「考えが幼くてかわいいな」
「でも、現実はそんなに簡単ではないだろう」
そんなふうに思っていました。
ところが、その子は高校1年生になっても、高校3年生になっても、同じことを言い続けていました。
そして実際に、中堅私大の国際学部に自己推薦で合格しました。
その子は、中学生の頃から、市が主催する外国人との交流会に参加したり、中国人や韓国人の先生による会話教室に通ったりしていました。
誰かに言われたからではありません。
実績作りのためでもありません。
ただ、外国の人と関わることが好きだったのです。
高3の時点で、社会課題を深く語れていたわけではなかったかもしれません。
でも、志望理由書を書くとなると、書くことはいくらでも出てきました。
なぜなら、その子の中には、中学時代から続いている関心と行動があったからです。
あとになって、それが一本の線になったのです。
この二人に共通しているのは、急に作った実績ではないということです。
どちらも、自分の関心に向かって、長く行動していました。
福祉の子は、社会課題に向かって関心を深めていった。
国際ライターの子は、外国の人と関わりたいという思いを持ち続けた。
タイプは違います。
でも、どちらにも本物のヒストリーがありました。
高1からヒストリーを作るというのは、何か特別な実績を作るという意味ではありません。
自分の興味を大切にする。
気になることを調べてみる。
学校の探究活動に真剣に取り組む。
地域の活動に参加してみる。
本を読む。
人に話を聞く。
経験したことを記録しておく。
そういう一つひとつが、あとで志望理由書や面接につながっていきます。
大切なのは、活動の大きさではありません。
なぜ、それをしたのか。
そこから何を考えたのか。
次に何をしてみたいと思ったのか。
ここです。
高1から、自分の関心や行動を少しずつ積み上げていくこと。
それが、総合型選抜のためだけでなく、これからの進路を考える土台になります。
入試は、高3になってから急に始まるものではありません。
将来を考える時間は、もっと前から始まっています。
高1からヒストリーを作る。
それは、自分の人生を少しずつ自分の言葉で語れるようになる準備なのだと思います。