総合型選抜や学校推薦型選抜で、多くの生徒が苦労するものがあります。
それが、志望理由書です。
志望理由書というと、
「なぜ、この大学を志望したのか」
「大学で何を学びたいのか」
「将来どうなりたいのか」
を書くものだと思われるかもしれません。
もちろん、それは間違いではありません。
しかし実際に指導していると、志望理由書で一番難しいのは、文章を書くことそのものではありません。
一番難しいのは、自分の将来像を言葉にすることです。
「将来、何をしたいのか」
「なぜ、その分野に興味があるのか」
「大学で学ぶことと、自分の経験がどうつながるのか」
ここがはっきりしていないと、どれだけ文章を整えても、志望理由書は弱くなります。
きれいな言葉を並べることはできます。
「社会に貢献したい」
「人の役に立ちたい」
「グローバルに活躍したい」
「地域に貢献したい」
どれも悪い言葉ではありません。
でも、それだけでは足りません。
なぜ、そう思うようになったのか。
どんな経験があったのか。
何に問題意識を持ったのか。
その大学でなければならない理由は何か。
ここがなければ、志望理由書はどこかで聞いたような文章になってしまいます。
私は、志望理由書を見るときに、いつも気になることがあります。
それは、その文章の中に、その子本人がいるかどうかです。
どの大学にも出せそうな文章。
誰が書いても同じように見える文章。
パンフレットの言葉をきれいにつなげただけの文章。
そういう志望理由書は、読んでいてもその子の姿が見えてきません。
反対に、少し不器用でも、その子自身の経験や考えが入っている文章は伝わります。
中学生の頃から障害者施設でボランティアを続けていた生徒がいました。
その子は、社会福祉について自分なりに考えていました。
そこで出会った人たちとの関わり。
感じたこと。
疑問に思ったこと。
社会福祉を学びたいと思うようになった理由。
それらが、その子の中でつながっていました。
だから、志望理由書を書くときに、言葉に力がありました。
もう一人、中学2年生の頃から「国際ライターになる」と言っていた生徒もいました。
当時の私は、正直に言えば、少し幼い夢のように受け止めていました。
でも、その子は高校生になっても同じことを言い続け、実際に外国人との交流会や会話教室にも参加していました。
その子にとって、外国の人と関わることは、ただの憧れではありませんでした。
好きで、関心があって、自分から動いてきたことでした。
だから志望理由書を書くときに、
なぜ国際学部で学びたいのか。
なぜ異文化交流に関心があるのか。
大学で何を学びたいのか。
そこが自然につながりました。
志望理由書は、作文の技術だけで作るものではありません。
もちろん、文章の構成や表現は大切です。
読みやすく整理すること。
大学の学びと自分の経験をつなげること。
将来像を具体的に書くこと。
これらは指導で整えることができます。
しかし、材料がなければ、いくら整えても限界があります。
材料とは、特別な実績のことだけではありません。
自分が興味を持ったこと。
続けてきたこと。
人と関わった経験。
本を読んで考えたこと。
学校の探究活動で調べたこと。
地域や社会を見て感じた違和感。
そうしたものです。
その材料を振り返り、
「自分はなぜこれに関心があるのか」
「この経験から何を学んだのか」
「大学で何を深めたいのか」
「将来、どんな形で社会と関わりたいのか」
と考えていく。
それが、志望理由書を書く前に必要な作業です。
将来像も、最初から立派である必要はありません。
高校生の時点で、将来を完璧に決めることは難しいです。
むしろ、最初はぼんやりしていて当然です。
ただし、ぼんやりしたままにしておくのではなく、少しずつ輪郭を出していくことが大切です。
興味のある分野を調べる。
大学の学部や学科を見てみる。
将来の仕事について知る。
自分がどんな社会課題に関心を持っているのか考える。
誰の役に立ちたいのかを考える。
そうしていく中で、将来像は少しずつ見えてきます。
志望理由書で大切なのは、完璧な夢を語ることではありません。
自分の経験と、大学での学びと、将来の方向性がつながっていることです。
このつながりがあると、文章に説得力が出ます。
反対に、このつながりがないと、どれだけ立派な言葉を使っても弱くなります。
総合型選抜や推薦入試では、志望理由書だけでなく、面接でも同じことが問われます。
「なぜこの大学なのですか」
「なぜこの学部なのですか」
「高校時代に何をしてきましたか」
「そこから何を学びましたか」
「将来、どのように社会に関わりたいですか」
こう聞かれたときに、自分の言葉で答えられるかどうか。
そこが大切です。
志望理由書は、大学に提出する書類であると同時に、自分自身と向き合うための文章でもあります。
自分は何に関心があるのか。
何を大切にしているのか。
これから何を学びたいのか。
将来、どんな人になりたいのか。
それを考える時間です。
だから、志望理由書の準備は、受験直前に文章を整えることだけではありません。
高1から、できれば中学生の頃から、自分の興味や経験を少しずつ振り返っておくこと。
それが、将来像を言葉にする土台になります。
伊万里進学塾では、志望理由書をただきれいに書くことだけを目的にはしていません。
その子が何を考えてきたのか。
どんな経験をしてきたのか。
どんな将来を描こうとしているのか。
そこを一緒に整理していきます。
志望理由書は、うまく見せるための文章ではありません。
自分のこれまでと、これからをつなぐ文章です。
だからこそ、早い段階から自分の興味や関心を大切にしてほしいと思います。
将来像は、急に作るものではありません。
日々の経験と、考え続ける時間の中で、少しずつ育っていくものです。